『歯周病のコントロール』

大阪市生野区の歯医者、有田歯科医院院長の有田です。

「リンゴをかじると血が出ませんか?」。このキャッチコピーをご存じですか? お若い方は、ご存じないと思いますが・・・(笑)。

実は、昭和47年ごろにTVで放映されていた『デンターライオン』という歯周病予防用の歯磨剤のコマーシャルでのキャッチコピーなんです。もう50年も経つんですねえ。あのコマーシャルを覚えてらっしゃる方は、もうそれなりのご年齢になっておられ、中には、実際に歯周病に悩んでおられる方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
当時の日本は高度成長期から安定期に入り始めた頃で、私共の大先輩の歯科医師の先生方は、洪水の様にあふれてくる虫歯への対策で疲労困憊、四苦八苦しながらも、更に『歯周病』対策をも緒に就き始めなければならない頃だったのだろうと思います。そういうニーズに答える様に、『歯周病』をターゲットとした商品が開発、販売されたんでしょうね。

「先生、何や最近、硬いもんが噛まれしまへんねん。全体的に冷たいもんに凍みるし、歯ぁ磨いたら血が出ますねん。まあ、我慢できん程でもなかったし放ってたら、この年末の忙しい時に歯茎が腫れて、痛とうなって来ましてん。これって歯槽膿漏でっか?わし、若い頃から虫歯なんかなった事も無うて、硬いもんでも何でもバリバリ噛んでて、歯ぁには自信有ったのに、やっぱり年なんかなぁ。」

虫歯もそうですが、歯周病の原因は、お口の中に常在している細菌群です。細菌群は、糖をエネルギー源としてプラークを形成し、その中のある種の細菌は、歯を溶かして虫歯を発生させます。ある種の細菌は、歯石を形成します。そして、歯周病菌は歯茎に炎症を引き起こさせ、更に進行すると歯を支える骨を溶かします。その結果、歯がぐらぐらになったり、歯茎が腫れたりしてしまいます。重度になると、遂には残念ながら抜歯せざるを得なくなってしまいます。虫歯の場合、痛みや腫れが徐々にひどくなっていき、患者様もそれまでに歯科医院に受信される場合が多いですが、歯周病は気づかぬうちに静かに進行し、急性症状が出るころは、著しく進行している場合が多いのです。ですから、虫歯が原因で抜歯するというケースは少ないですが、残念ながら歯周病では、抜歯せざるを得ない場合も有ります。

歯周病は、歯周病菌の産する毒素と体の抵抗力の闘いです。ですから、その罹患の程度や進行具合は、個人個人によって違います。お口の中を拝見いたしますと、50歳~60歳で歯石がたくさん付いているのに、歯周病の進行は左程でも無い方もおられますし、逆に、30歳で、レントゲンで骨の吸収が進行して重度の歯周病を患っておられる方もいらっしゃいます。これは、その方が持っておられる歯周病菌にたいする免疫力の違いからくる症状の差です。

私共の歯周病に対する考え方は、あなたのお口の中からこの病気を失くしてしまうというよりは、あなたと共に、この病気をコントロールし続けるといった方が良いかもしれません。もちろん、どうしても限界を超えていると思われる歯に関しては、歯周病を失くす決定的な方法(=抜歯)を取らざるを得ない場合も有りますが、歯周外科的な治療は最低限に限っています。

そのコントロールで最も大切なのは、原因となるプラーク(歯垢)を適切に取り除いて、つきにくくする事です。その為に、どのようにして歯のお手入れ(歯磨き)をすべきかを歯科衛生士がご指導させて頂いています。これを『プラークコントロール』と呼んでいます。最近の歯磨剤のコマーシャルで、このワードをお聞きになった事が有るのではないでしょうか。そしてこれは日々の生活の中で、『あなた』に習慣付けて実行して頂かねばなりません。これが、歯周病予防(虫歯予防も)の必須条件です。その上で、私共が行う歯石の除去や専門の機械を使ったクリーニングを定期的に行う必要が有ります。この歯周病と言う病気をずっとコントロールし、管理し続けるのです。私は、私の様な一般歯科医師が行う歯周病に対しての実際の対処法としては、この方法がよりマッチしているのではないかと考えています。

私共は、『あなたの歯周病』を如何にコントロールすれば良いか?を常に模索しています。

今年最後のブログは、歯周病に対しての当院の考え方を大まかですが、少し書かせて頂きました。来年もよろしくお願いします。どうぞ良いお年をお迎え下さい。

あなたのステキな笑顔をいつまでも❣